JAAS News第119号をお届けします シニア社会学会事務局 2009年6月24

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1.
2009年度定時総会・大会報告                1 
    
同上    会員の感想               1−2
2.第8回大会・基調講演「いつでも現役 いつまでも現役」   2
    同上    会員の感想                3
3.研究会開催のご案内                    3  
4.2009年連続講座のお知らせ                 

1.2009年度定時総会・大会報告
2009度定時総会・大会は530日(東京家政学院大学にて、武者忠子理事の司会により開式した。冒頭袖井孝子会長より、法人化をめぐる問題を中心とした当学会を取り巻く昨今の情勢変化に積極的に対応し、今年はこれまで以上に『変化する』ことで活性化した学会運営を目指すので、皆さんの協力に期待するとの挨拶があった。
 引き続いて定足数143名に対し出席者数52名、委任状が111名、合計163名であるので本総会は有効に成立している事が報告された後、大島洋理事が議長に選出され総会の審議に入った。都築賢二事務局長より、提出議案(第1号から第5号議案)について説明がなされた上で審議されたが、いずれも満場一致で原案通り承認されて、総会は無事終了した。
 引き続き第8回シニア社会学会研究発表大会が「いつでも現役・いつまでも現役」を主題として行われ、午前中には、会員による活動事例・研究発表、「高齢者とIT」に関する調査結果の発表が行われた。昼食後慶應義塾大学・塾長に就任直後の清家篤副会長の基調講演があり、続いてパネルディスカッションが活発・熱心に行われて大会は無事終了した。その後、地下のラウンジルームに場所を移して、懇親パーティが和やかなうちに行われた。   (神波・記)

◆会員の感想 <第8回大会に参加して>       大西 馨氏(香川県観音寺市)
 530日朝9時、小雨降るJR市ヶ谷駅に到着しました。地方から来て見る東京は、島崎藤村の「夜明け前」の青山半蔵が木曾から江戸へ旅した時と同じ感慨であります。会場の東京家政学院大学までマップを手にして、人に聞きながら定刻前に出席することができました。
 今年の大会で印象深かったのは、会員による活動事例・研究発表の中での、中国の「社区」とシニアの社会活動についての報告でした。中国13億の民の65歳以上の高齢者人口比は2002年7%、2028年には14%、さらに2038年には20%になるとのこと。そして中国は儒教の国、敬老精神による介護や医療の問題など、日本が経験してきた課題に直面しようとしています。
 その際、私達シニア社会学会が蓄積しておりますノウハウを、外国にも発信できる時が来ることを予感の持てる内容でした。その他「高齢者とIT」調査の内容など、高齢者の生きがいを呼び起こすものであり、大会に参加できたことを心から感謝しております。

◆会員の感想 <第8回シニア社会学会総会に参加して> 吉竹弘行氏(理事 横浜市)
 総会へは創立総会以来、出来るだけ出席してきたが、ずいぶん学会総会らしくなってきたという印象を持った。生意気に感じられるかもしれないが、施設がすばらしく発表の質が向上してきたためではないだろうか。
今回、初めて東京家政学院大学の階段教室で行われたが、明るく、放送・映像設備が良かったので講演発表者の説明がよくわかった。発表者やプログラムも良かったと思う。シニア世代が働き続けるための環境整備について、清家副会長が水分補給と休憩時間の確保のためにわざと食べるのに時間がかかるミゾレ氷菓を活用している中小企業のお話をしていただいたことや、会員活動事例やパネルでも先進的事例や海外事例といった新しくかつ具体的な情報が提供されていた。懇親パーティも暖かい雰囲気の中で多くの方が参加していただき良かったと思う。

◆会員の感想 <懇親会に思う>           三平武男氏(千葉県船橋市)
 当会の懇親会は、会場には知人がほとんどいない、という意味で私にとっては他の懇親会とは違っている。しかし、そんな懇親会が喜びや希望を生み出す場となった。
 パネラーの天谷正先生にお声をかけた。私事で恐縮であるが、私の両親の婚礼時の雌蝶役(その稚児も今は89才になられた)をされた方の弟の名を天谷正と聞いた覚えがあり、天谷氏の履歴を見て“もしや”と思ったからである。驚かれた天谷さんは、胸の名札に目をやり「あっ、三平さん・・」と。勿論、大いに会話が弾んだ。
 また濱口先生から「しばらくです」と声をかけていただいた。「望ましいシニア像」研究会に23回出席したことがあったからである。懇親会では興味ある情報を頂いた。そして同研究会の大島さん、島村さんとも。さらに、事務局長都築さん、旧知の関係だが会うと話しが弾む。今回は実際何かに発展しそうな予感がする話となった。
 パネル討論での濱口先生のコメントの中に「辞書の“社会”の項には“人との繋がり”という大切な説明がない」との指摘があった。懇親会は、“人との繋がり”こそ喜びである、と実感した“社会”となり、まさしく濱口先生が指摘されたことの具現化の場であった。

2.第回大会・基調講演
「いつでも現役 いつまでも現役」清家 篤氏慶應義塾大学塾長・商学部教授、労働経済学、当学会副会長)
 生涯現役社会とは、自分がやりたいと思っていることが、年齢の制限なしにやれる社会を作ること。日本は世界に類を見ない高齢化を経験している。このことが、年金、介護、雇用の問題を引き起こす要因となっている。高齢化は、日本の経済、社会の成功の結果であり、決して悪いことではない。少子化は、昭和22年に合計出生率が4.4名であったが、現在は1.33名となっており、人口減に歯止めはかかっていない。出生率が2名を割り込むと人口を維持することはできない。現在12700万人の人口は、今世紀末には6500万人になると推計されている。
 日本の高齢者は元気で、長生きで、なおかつ働く意欲が高い。この恵まれた条件を活かすことが大切。団塊の世代は毎年270万人が定年を迎え、最終的には670万人以上となる。その70%が働く意欲を持っている。団塊の世代は、人材の宝庫であり、仕事能力も高い。この人たちをどうやって先導役とするのかが課題。その最大の課題は、定年。年金・雇用は、60歳を年齢基準として決められていた。しかし、それが今見直されている。年金制度を維持するためには、現役世代を多くすることが必要。
 今生まれてくる子どもが成人した時に、3人を1人で支える時代となる。それ故に、働く意思と仕事能力がある人には、働き続けてもらおうという生涯現役社会実現が望まれる。
 年齢制限を廃止できない原因となっているのは、賃金制度と処遇制度であり、年功賃金・年功序列が足かせとなっている。70歳半ばまで働くためには、日々能力開発をする必要がある。つまり、健康や能力への投資が重要になってくる。それとともに、職業人生が短距離競争型から長距離競争型へ変化せざるを得ない。
 企業は報酬としての能力開発という視点が大切になる。これは、人材を集めるための重要要件となる。自分の仕事に強いこだわりを持ち、自分の仕事に誇りを持つ「仕事人間」となることが大切。また、多様な働き方、例えばフリーランスで働く、プロフェッショナル化する、というようにもっともっと工夫していくことが重要。「亭主丈夫で留守番がよい」とならないよう、生活人としても生涯現役であり続けることが必要である。          (黒澤・記)

◆会員の感想 <基調講演を拝聴して>        大木壯次氏(埼玉県川越市)
 今回の大会のメインテーマである「いつでも現役、いつまでも現役」について、なぜ生涯現役社会でなければならないのかという基礎的なところから、整然と説き起こし、そのためには定年制度の見直しをはじめとする雇用改革が必要であるとともに、高齢者の能力活用のための創意工夫が必要であると述べる。印象的だったのは、豊かな超高齢社会に向けて、これからは「会社人間」ではなく「仕事人間」の時代にならなければならないと力説した点である。当然、多様な働き方も必要だし、生活人としても生涯現役でなければならないと説く。
 「いつでも現役、いつまでも現役」を標榜するからには、シニアがいたずらに幅を利かせ、若い世代の顰蹙(ひんしゅく)を買うことのないようにしなければならない。その覚悟が必要であることを改めて感じた。

3.「自立と共生の社会学」研究会開催のご案内
 濱口研究会の新シリーズ「自立と共生の社会学」研究会の第3回は、下記の通り開催されます。
(1)   日時 :717()17時〜19
(2)   場所 :早稲田大学高田牧舎2階人総研会議室
(3)   テーマ:発表―大木壯次さん「第3章 正規雇用―非正規雇用を超えて」
(4)   その他:研究会参加費として300円を徴収させていただきます。
参加ご希望の方は、メールまたはFAXで事務局・島村までご連絡ください。(島村・記)

4.2009年度連続講座『熟年世代の夫婦論』のお知らせ
 本年度の連続講座開催の要領が決定いたしましたのでお知らせします。昨年ご好評をいただいた銀座・資生堂の9Fホールを会場として、全6回の開催です。銀座の賑わいと著名な講師のお話を聞き、充実の週末をお楽しみください。
1)期 日 :2009年9月26日(土)〜2010213日(土)
       各回とも、14時〜16時の開催。募集人数は最大45名。
       参加費は、会員2500円、非会員3000円。(ケーキ、コーヒーor紅茶付)
       6回前納の場合、会員12000円、非会員15000円。
      (6回分前納の一括申し込みは、911日(金)までの受け付けとなります)
2)場 所 :東京銀座・資生堂 9Fホール
3)全体テーマ:『熟年世代の夫婦論』 〜人生の午後をどう生きるか〜
         各回テーマと講師(予定)
・第12009926(土)「いま、なぜ中高年夫婦が注目されるのか」(袖井孝子)
・第2回 20091017(土)「夫婦で創る定年後ライフ」   (加藤 仁)
・第3回 20091114(土)「60歳からの夫婦の家」        (天野 彰)
・第4回 2009125日(土)「団塊夫婦の地域福祉実践」    (川村匡由)
・第5回 2010116日(土)「安心の老後設計」               (榊原節子)
・第6回 2010213日(土)「後悔しない人生のフィナーレ」(吉田太一)
※ご家族やご友人などにもお声掛けいただき、多数の方の参加をお待ちしております。                               (事務局担当 鈴木)