◆第1回例会 2002年3月28日 原宿パレフランス・5階第2会議室 19名参加
日本労働者協同組合連合会・菅野正純理事長が、雇用の場に根本的な変化が起こっており、企業・産業・経済のあり方そのものが問われていること、そうしたなかで、地方・地域から新しい風が吹き始めたと、沖縄から東北までの様々な具体例を示し、こうした試みを横に繋いでいこうと呼びかけました。
次いで長寿社会文化協会・松木久佳元事務局長が、企業から地域社会に大量のシニアが放出されつつあるが、まずは自分の得意分野を生かした仲間作りから始めようと、全国各地での元気シニア達の活動を紹介しました。東邦学園大学・山極完治教授は、3人の話は「コミュニティを新しいものにしたい」という点で共通しているとした上で、これからは「暮らしの場を軸に“自己雇用”の時代」と総括しました。
現在、私たちの地域社会には、暮らしにとって必要または有用な仕事(労働)だと多くの住民に認められながら、(1)企業の採算に乗らない、(2)行政サービスだけでは手が届かない、などのために、「市民・市民団体の自発的な活動によって担われているボランティアあるいは非営利(NPO)型の労働領域」が確実に増えつつあります。
◆第2回例会 5月27日 高齢者協同組合連合会・4階会議室 14名参加
菅野正純座長からテーマの絞り込みのためのたたき台が提案され、出席者全員の取り上げたいテーマ、今後の進め方などについての意見が披瀝されました。現下の社会状況から「雇用労働には限界がある」との認識では一致しているものの、かなり多岐にわたる意見が出されたため、次回はこれらを整理し絞り込むこととして終わりました。
◆第3回例会 6月21日 高齢者協同組合連合会4階会議室 10名参加
出席者の意見交換を行い、今後事例研究を進めるに当たってのイメージ合わせを行った。
次回は、先般の当学会第1回大会で受託研究「社会的有用労働」の研究報告をされた、神奈川大学教授・松岡紀雄氏を迎えて、同氏の解説を交えながら「多様な働きの場の議論をする予定です。
今まで女性・シニア・ボランティア等によってのみ支えられてきた「社会的有用労働」を、専門家だけでなく、もっと広い範囲の方々の参加により見直すことが、「新しい働きの場」の探求には欠かせないとの認識のもと、従来のメンバーにこだわらず新しい参加者を広く募ることになりました。
当日は、第1回大会で配布した小冊子「市民活動を支える社会的有用労働」をご持参下さい。(お持ちでない方には、当日用意いたします。)
◆第4回例会 7月25日 東京労働会館 17人参加
先般「市民活動を支える社会的有用労働」をまとめられた神奈川大学経営学部教授/松岡紀雄氏を迎えて、氏のアメリカ滞在経験を基に今後はNPO、ボランティア活動が社会を活性化するキーで、日本の長期にわたる社会的、経済的停滞を打破するために真剣に取り組むべきだと話された。社会にとって大事なことを、お金が儲かる仕事と儲からない仕事に分けて、後者を従来の税金で処理する方式から改めてNPO、市民団体が仕事として担っていくことを展望する。そのためには現在続々と企業を定年退職する元気な高齢者が活躍して欲しいとのメッセージをいただいた。
◆第5回例会 9月19日 東京労働会館 人参加
9月19日の第5回研究会では、高齢協が全国に設置している福祉事業所の事例紹介(高齢協・田中羊子氏)と東伊豆でのユニバーサルランのイベントを通じた取り組み事例(NPO法人・コミュニケーション・スクエア21・代表叶内路子氏)の紹介がありました。いずれも「多様な働きの場」でいきいきとした活動を展開されていて大いなる刺激を受けました。
◆第6回例会 10月24日
訪問先:日本労働者協同組合連合会・深谷地域福祉事業所「だんらん」等
雨上がりの午前10時に東京駅のレンガ建築を模した高崎線・深谷駅へ総勢12人の見学者が集合して、日本労働者協同組合連合会(労協連)センター事業団・深谷地域福祉事業所長・岡元かつ子さんの案内で2台の車に分乗して、10分ほどの田園の真っ只中にある「とうふ工房愛彩」へ向かう。ここでは20人の組合員メンバーが交代で1日、8時から6時の間、5工程で300丁のこだわり豆腐を作り、学校、役所、生協等へ卸している。
7年前まで地元生協の物流関連の委託事業をワーカーズコープで運営してきたが、不況とコスト競争で仕事が減り、独自事業として立ち上げた。単価を220円に抑えているので、人件費を除く経費率は93%で経営はまだ苦しいが、原材料の大豆、水、にがりにこだわり、働く喜びと質のよい豆腐を供給する自信に満ちた皆の笑顔は非常に明るかったのが印象的。
次に向かったのは、信号のある四つ角に位置した「ヘルパーステーションだんらん」。撤退したセブンイレブンの店舗あとを利用して1階に介護保険事業のデイサービスと配食事業を、2階にヘルパーステーションの事務所を設けた事業所である。
運営は同じ「ワーカーズコープ愛彩」。 デイサービスは1日15人程で年間200〜300人が利用、配食は1日70〜80食、訪問介護は月70名程、居宅支援事業で100名程の利用者があり、ヘルパーも組合員となって現在80名の人達が関わっているという。デイサービスの利用者が皆生き生きとして楽しんでいる。
最後に隣接する熊谷市に拠点がある「ヘルパーステーションほほえみ」で昼食を取りながら、岡元さんを囲んで質疑応答の時間を持った。自分達で働くことの意味、何か問題が起こったら十分な議論を通じて理解し、一致し、説得して事業計画へ反映し、ヘルパー研修の開催等を通じて協力者を確保しながら事業を運営する熱い思いを話され、見学者一同はそれぞれに感激した1日でした。
◆第7回例会 2003年1月21日(火)
見学先 : @「ホットステーションさくらはうす」(高齢者の「講座」を中心としたたまり場)
東京都町田市旭町3−22−58 (代表者・小菅恵子さん)
A「コミュニティはうす・シナモン」(デイサービス)
東京都町田市常盤町3398−8 (責任者・佐藤さん)
◆第8回例会 3月18日(火)18時から20時 場所 : 東京労働会館
(1)10月、1月の現場見学についての報告
・地域で福祉作業所の立上を計画しており、大変参考となり勇気を貰った。
・シニアがもっと沢山参加していて欲しかった。
・パワーがものすごかったが、デーサービスのプログラムが定型化していて気になった。
・2回の見学先はそれぞれリーダーの理念がしっかりしていて、参加者も生き生きしていたのが印象的。
事業の継続には皆が苦労して協力しているのが分かったが、将来性については若干不安を感じた。
・新しい仕事の発想を地域のニーズに汲み取っているのが分かった。
・コミュニティが軸になって仕事が回り、実験的な仕事にも関与していく積極的な面が面白かった。
資料の労協新聞にも、ムーブケア(介護タクシー)・商店街の子育て支援・地方自治体の再就職訓練事業に600時間の講座受託などが紹介された。
今後はこれらの分析、モデル化を検討する必要がある。等の意見が出された。
(2)今後のスケジュール
2回の見学会を終えて、研究会のコンセプト・全体像の議論を再度議論してはどうか。
考え方として、1.年金受給者と主婦層を対象とする考え方(シニアの自立)、2.団塊の世代、リストラ対象世代を意識して諸問題を取り組む(次世代支援)ことが考えられる。
最近の所得調査では、フルタイムで年収300万円、パートで100万円が多数。また、キーワードはインフォーマル経済とディーセントワーク。
今後、本研究会は次世代支援を意識して、世帯の中でダブルインカムを前提とした多様な働きの場作りのコンセプトを整理することとした。
◆第9回例会 4月24日(木)18時から20時 場所:東京労働会館 参加:9人
(1)高橋昌子氏による論文「元気高齢者の介護マンパワーとしての活躍に関する一考察」概要報告と資料(高橋昌子氏、介護福祉学第9巻第1号2002.10)提供
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時間の関係でパワーポイント資料を中心に、元気高齢者の現状と将来動向、社会福祉分野の労働市場、尾高邦雄・下山昭夫・秋山憲治・蟻塚昌克各教授の関係論点紹介、各種アンケート調査による分析、今後の課題等を発表。
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介護研修の男女別参加率は半々だが、4,50代のリストラ世代男性の再就職先としては実例も少なく、今後新しい仕事の開発が求められる。(介護タクシー、配食、管理的職種、ピアカウンセリング等)
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介護福祉分野では、高齢者・障害者の生活支援を中心にケア像をどう作るかが問題となる。(要介護高齢者と育児の連携、サービスメニューからアクティビティメニューへ、富山方式等)
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生活クラブ生協運動の行き詰まりを参考にして協働労働の研究普及やNPO方式による仕事作りを更に検討する必要がある。
(2)幹事からの連絡
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前回議事録に追加
キーワードとして「喰えるコミュニティビジネス」を追加する。本研究会の主として目指すところは、無償のボランティア等による社会参加活動ではなく、新しい働きの場における妥当な労働の対価をはじめから想定することにある。
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シニア社会学会運営委員会の意向(報告)
現在進行中の各種研究会等(「雇用における年齢差別研究会」、「ユニバーサル・デザイン・スタデイ研究会」、「多様な働きの場の創出研究会」、「次世代育成支援研究会」、「望ましいシニア像研究会」、「定点観測プロジェクト」)相互のまたは全体の交流会を検討するとの意見が出た。
◆第10回例会 5月29日(木)18時から20時 高齢者協同組合連合会4階会議室 参加;8名
1.今井 純子氏(会員)による「シニア世代の生き方としての労働」をテーマに発達心理学を中心に説明。
@堺屋太一著『大変な時代』から「90年代半ばまでは“めでたい高齢化”であったが、その後は“寂しい高齢化”が始まった。」を引用し、発表者のシニア世代からの発言として、「我々シニア世代がもっと声を上げるべきであり、高齢者の文化を高齢者から発する必要がある」。
A高齢者の労働を考える場合、社会性の労働が人生の6割を占めるということを考慮し、報酬に焦点を当てるだけでなく生きがいのある労働が求められる。そのためには、高齢者のニーズのとらえ方とそれをマーケットにどう反映させるかが重要となる。
B生涯発達の過程の資料を参考に、今までの体験が後の高齢期に影響を与える大衆化した老年期を内向きにしないこと。
2参加者とのディスカッション
@若者、あるいはリストラ等で職を探している時期の人々の職を元気な高齢者が奪っていいのか。現役世代の邪魔をしない。
A団塊の世代あるいはそれ以降の高齢者は、60歳後も働かざる得ない状況に陥る可能性が大きい。
B本研究会では時事問題に積極的に目を向けきっかけを作るべきである。行政で行えない部分を起業。企業の外、地域社会にニーズが多くある。
C発信者であり担い手である高齢者が高齢者のニーズをとらえた仕事起こしに取り組む(例;労力を行かせる介護を高齢者サイドから発信・終の棲家から地域社会に戻すケア)。
D従来の若者文化中心から高齢者文化へ。しかし、高齢者文化の経験不足から企業もあまり関心がない。
(文責:高橋昌子)
◆第11回例会 7月24日(木) 18時 高齢者協同組合連合会4階会議室 参加9名
●堀池喜一郎氏(シニアSOHO普及サロン・三鷹 代表理事、学会会員)による、日本地域政策学会第2回大会発表(7月6日)レジメ「シニアが地域で楽しくビジネスを!−NPO法人シニアSOHOの活動事例−」「事業型NPOのための、行政との協働の地域インフラつくり」を参考資料にしての報告
1)シニアSOHOの活動状況・目的等の説明
3年を経た活動で、会員数290名、ワーキンググループ数27、2002年度売上げ6,000万円(受注プロジェクト数11)、交流会開催 累計23回 1700名参加
会社員OBがITの地域普及の戦力になり、従来からあるIT講座ではない専門性を教えることの特訓を行った。全会員がメーリングリストに入っているので中身は事務的ではあるが、頻繁に行う交流会が大きな役割を果たす。タスク管理などのマネージングはプロジェクト管理としてすべてメーリングリストで公開している。やりたい人がやりたいことを行うプラットホーム型が特徴。
2)シニアSOHOの課題・将来ビジョン現在、小学校15校の総合的学習でのコンピューター学習の管理を行っているが、「コア・コンピテンシー」(核となる強み)を持つ地域ITヘルプデスクやマッチングシステムが課題である。 また、シ
ニアSOHOから独立したグループもあり分離独立を推奨しているが、今後、運営協議会(まとめ役「NPO協働リーグ」)を作っていくこと、マネジメント能力を強化すること等も大きな課題である。最近の問題として、若者や主婦層がただ仕事だけを求めて入会するようになってきたことが指摘された。
3)その他
「主体の必要性と構築」「行政側の具備していたもの、具備していくもの」についての説明の後、ヒューマンサービスの重要性を強調。今後、本研究会でも、ヒューマンサービスはキーワードになるであろう。
●時間の都合上、今回は報告者の発表のみとなったので、本件に関する質問・ディスカッション等は次回の研究会で継続して行うこととした。
(高橋昌子・記)
◆第12回例会:8月20日(水)18時〜20時 参加9名(於:労働者協同組合連合会4階会議室)●堀池喜一郎氏(会員、シニアSOHO普及サロン三鷹代表理事)の前回(7/24)発表と今回の追加説明・問題提起を受けて質疑応答と意見交換を行なった。
1.堀池氏より、藤江著『コミュニティサービス戦略〜地域市民のベンチャー事業』(第一法規出版)の紹介と、NPO法人シニアSOHO普及サロン・三鷹の「IT講座」党の活動の現状と合せて、コミュニティビジネスの将来像や現在の問題等について報告があり、その後参加者で意見交換を行なった。
2.意見交換の主な内容
・コミュニティビジネスが、コミュニティニーズに合ったビジネスとして、地域の主婦層やシニア層の能力を生かした活動として発展していくには、マネージメント能力必要で、その人材育成が必須である。(大企業に勤めていた人でもマニュアルに基づく仕事経験者がほとんどで、マネージメントの視点でビジネスに参加する姿勢を持ち得ないことが多い)
・ヒューマンサービスは、現在ではコミュニティサービスとして行なわれることは多くない。しかし、高齢社会の現代では、企業や行政活動になじみ得ないヒューマンサービスがコミュニティサービスとして要請されてくるであろう。ヒューマンサービスでは、従来なされてきたようなコミュニティサービスの組織やサービス活動の成果の評価法などがそのまま活用できるか、コミュニティビジネスとして成り立ち得るか等に関して、今後検討していく必要がある。
・コミュニティサービスを行政が担うのは、予算面でも機能面でも今後ますます困難になるばかりでなく、コミュニティのニーズを把握することも難しい。(神奈川県のある市では、福祉予算配分を市民団体や協議会に委託している。)コミュニティニーズを引き出し、サービスを考えるのは市民やNPOで、行政はそれらのサービスを法令に基づいて平等にコーディネートする程度になっていくのではないか。
3.今回の例会では、コミュニティサービス、コミュニティビジネスの今後のあり方や問題点、行政との関わり方等について、活発なディスカッションがなされた。参加者から、今後もこのテーマについて深めていくために専門に研究されている方の意見を聞きたいとの声が多く、次回は『市民と企業と行政の新しい協働関係のあり方』と題して、山極完治氏の発表を予定している。 (今井 純子・記)
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幹事代表:菅野 正純(日本労働者協同組合連合会・理事長)
幹 事:松木 久佳(長寿社会文化協会・前事務局長)
〃 :山極 完治(東邦学園大学・教授) |
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◆第14回例会報告
12月19日開催され、9名参加。
山極完治・東邦学園大学教授より「より深みのあるコミュニティ・ビジネスの概念とは」について報告がなされ意見交換を行った。
次回は2月5日(木)18時から 於:東京労働会館(南大塚)
◆第13回例会予告
次回の研究会は、下記により開かれます。
期日:12月19日(金) 18:00〜
会場:高齢者協同組合連合会・会議室:Tel.03-5978-2190(JR大塚駅から徒歩8分)
講師:山極完治氏(東邦学園大学教授)
テーマ:「より深みのあるコミュニティ・ビジネスの概念とは」
参加申込みは事務局までどうぞ。 (守永・記) |