研究発表大会


 シニア社会学会第4回定時総会・大会プログラム 

 〜〜シニアが拓く 未来の日本・・・・シニアからの提言〜〜

◇期日:2005年6月25日(土) 
           

◇場所:早稲田大学・大隈小講堂 
    (東京都新宿区・早稲田大学構内正門前)


◆第1部 第4回定時総会 10:00〜10:40(40分)
               <シニア社会学会会員のみ> 
  □議事 ・2004年度活動報告及び決算報告
      ・2005年度活動計画及び予算案
      ・理事等役員改選
 

  □新役員挨拶 10:55〜11:05(10分)

◆第2部 第4回研究発表大会

          参加費:会員・一般の方とも1000円(資料代)

(1)研究会活動報告 11:10〜12:10
(60分)
   ○雇用における年齢差別研究会(清家篤氏・研究会座長)

    「エイジフリー度測定指標について」
   ○望ましいシニア像研究会  (大島洋氏・研究会グループリーダー)
    「シニアからの提言52」
   ○次世代育成支援研究会   (田口まり氏・研究会員
             ・
東久留米市男女平等推進センター協議会会長)
    「地域に於ける次世代育成支援とシニアの役割」
   ○ユニバーサル・デザイン・スタディ研究会
                 (吉田健一氏・研究会座長・アエカ代表)
    「上野地区のトイレマップ作成について」
   ○社会保障研究会      (望月幸代氏・研究会員)
    「日本の社会保障制度は暮らしの安心を守れるか


 <昼食休憩> 12:10〜13:00
 (50分)

(2)パネルディスカッション&タウンミーティング
               13:00〜15:00
(120分)
 テーマ 
   少子化・人口減少社会に挑むシニアの役割
       〜2007年問題を考える

     ※加藤仁氏の発題をもとに会場の皆様のご質問・ご意見を伺いながら
      活発なやりとりを期待しています。

 コメンテイター :加藤  仁 氏 (ノンフィクション作家・当学会理事)
 パネリスト   :清家  篤 氏 (慶應義塾大学教授・当学会副会長)
          濱口 晴彦 氏(創造学園大学教授・当学会理事)
          望月 幸代 氏(ミズ総合企画代表)

 コーディネーター:坂東 眞理子氏(昭和女子大学教授・女性文化研究所長)
          守永 英輔 氏(元淑徳大学教授・当学会理事・事務局長)
 
(3)会員による研究・事例発表 15:10〜16:10(60分)
   次の5会員が発表します。
    伊藤 参午氏(所沢市) 黒澤 真澄氏(横浜市) 西田 由紀子氏(横浜市)
    福元 公子氏(町田市) 渡辺 啓巳氏(つくば市)


◆第3部 懇親パーティ 16:30〜18:00(90分)<一般の方も歓迎>
       
  会場:大隈ガーデンハウス(大隈講堂ウラ)
  会費:4000円      


<第4回定時総会・大会の概要報告>

6月25日(土)、第4回定時総会・研究発表大会が早稲田大学・大隈小講堂で開かれました。梅雨の季節でしたが、天候にも恵まれ盛会でした。
(1)総会の部:
冒頭、総会の議決権者数は357名、出席者数は186名(開会時出席者:42名・委任状:144名)で定足数179名を超えており総会は有効に成立していることが報告され、桂山理事の司会で定刻に開始されました。濱口晴彦氏(理事・運営委員長)を議長に選出して、5つの議案について都築賢二氏(理事・事務局長代理)から報告・説明がなされ審議が順調に進みました。各議案は出席会員の満場の拍手をもって、いずれも原案通り承認されました。

(2)研究発表大会の部:(出席者・84名、内非会員・9名)
研究会活動報告
研究会活動報告は、下記5研究会について発表されました。各研究会がそれぞれのテーマに真摯に取り組んでいる様子が直接伝わって来る内容でした。会場からはあの研究会に参加したいという声が聞こえて来ました。

@雇用における年齢差別研究会[発表者:座長・清家篤学会副会長]
研究会の目標は、エイジレス企業社会の実現である。今年度はその一方策として「企業のエイジレス度の指標作成」及び「調査の戦略」をまとめた。(エイジレス度指標シート、フェイス・シートは学会誌3号9293ページ参照)フェイス・シートは必要最小限とした。指標は大項目として、1.企業の理念・姿勢 2.採用管理 3.処遇管理 4.退職管理。その中で、予備的調査の必要を感じ、この3月にプレ調査を行った。現在、調査表の修正を行っている。これを踏まえ、本調査をぜひ行いたい。真の成果はこれからの段階である。この間に、研究会のすばらしいまとめ役であった鈴木正昭さんが亡くなられた。心から哀悼の意を表したい。

A望ましいシニア像研究会[座長:濱口晴彦学会運営委員長 発表者:大島洋・報告書編集委員長]
『シニアからの提言』:「望ましいシニア像」研究会報告書を5月に刊行。報告書には研究会から52の「シニアからの提言」が報告されている。その内容は多様だが、大きくまとめて五つの方向がある。

1.《シニア社会に適合した制度の整備を》シニアは社会のお荷物ではない。老いる権利の社会権化が必要。
2.《老若共同参画社会の世代間関係》シニアの年金食い逃げ論など世代間緊張関係の調整が急務。
3.《地域社会という居場所から》寛ぎかつ交わりをもてる居場所を公共政策として用意する。
4.《シニアは生き方でメンター(よき先輩)になろう》シニアは自己啓発につとめ次世代に範を示す。
5.《シニアの願い》大量定年を迎える2007年に向け「シニアスタート」を考えるべき。

B次世代育成支援研究会[座長:沖藤典子学会理事、発表者:田口まり・研究会員・東久留米市男女平等推進センター運営協議会会長]
20045月から奇数月に開催。第1回「つどい広場の意味と役割」奥山千鶴子氏(NPO法人びーのびーの代表)常設、日常性、多世代で支えること。第2回「シニアの社会的孫育て」雲雀信子氏(NPO法人サポーター・チャオ代表)支援するシニアはいまどきの親を知るなど。第3回「次世代育成支援施策の展開」度山徹氏(厚生労働省・少子化対策室)少子化社会対策大綱に当会2004年3月提出の提言の思想が組み込まれた。第4回「鎌倉市の次世代育成支援の取り組み」石井和子氏(鎌倉市こども局推進担当)こども局の創設と関係部所の連携。第5回「各地で広がる幼保一元化の動き」山田麗子氏(遊育編集長)一体的運営の施設、私立幼稚園の預かり保育の広がり。第6回「多世代交流の大切さと夢」小泉恵子氏(NPO法人W,Coめーぷるここ理事長)四世代高齢者マンションの仕掛けなど。

Cユニバーサルデザインスタデイ(UDS)研究会(発表者:座長・吉田健一・アエカ代表)
フィールドワークを大切にした活動を行っている。「上野地区トイレマップ」を5月から配布。高齢者やご婦人のため、商業施設のトイレをオープン使用させていただくことが必要だった。マップは、A3判八折で携帯に便利。12箇所のトイレ紹介や使用時の思いやりのあるマナーを訴えた。1万部。学会からの一部援助のほかは会員の拠出金。後援の台東区役所から、次回は浅草をとの要望もある。感じたことは、お金、地域、人。地域に根ざす活動が大切。上野観光連盟からも感謝されている。トイレの掲載を断るところが多かったが、セブンイレブンではオーナーの奥さんが、快く掲載に協力してくれた。「現場にこそ解決のヒントがある」と実感した。マップは、好評だが、使用者からの使い勝手を良く聞き、今後の参考にしていきたい。

D社会保障研究会[座長:袖井孝子学会副会長、発表者:望月幸代・研究会員・ミズ総合企画代表]
目的は、社会保障の実態と問題点を究明し、その成果を報告書にまとめ、出来れば厚生労働省に提出すること。04年9月から10回、研究会を開催。第2回は連合の小島氏を講師に労働側の意見。第3回は日本経団連の松井氏から経営側の意見。第4回は内閣府の増田氏に行政側の意見を聞いた。第5回は井原社会保険労務士、第6回は朝日新聞松浦記者、第7回は野村総合研究所の坂本氏、第8回はお茶の水女子大の永瀬氏というようにさまざまな分野からの意見を拝聴した。その成果発表として051029日(土)午後1:00から5:00まで、お茶の水女子大学で「年金シンポジウム ヤング対シニア」(仮題)を開催する予定。

□パネルディスカッション&タウンミーティング
「少子化・人口減少社会に挑むシニアの役割〜2007年問題を考える」
お昼休み直後に始まったパネルディスカッション&タウンミーティングは、コメンテーター加藤理事、パネリストとして清家副会長・濱口理事・望月幸代氏(ミズ総合企画代表)、コーデイネター坂東理事・守永理事両氏のもとで開かれました。近年2007年問題と呼ばれるようになったこのテーマについて、「シニア世代は自分の後半生をどう生きるか」また「シニア社会学会の果たすべき役割は」という視点から各パネリストの忌憚のない見解が披露されました。シニア社会学会への期待と要望が浮き彫りになったことは、大きな成果でした。
<各発言者の要旨>

守永 英輔(コーディネーター・学会事務局長・前淑徳大学教授)
 まず、大量の定年退職者が地域社会へ戻る2007年問題について。
清家 篤(学会副会長・慶応大学教授)
 2007年の何が問題なのか。すでに年金の支給開始年齢の引き上げに対応して「高齢者雇用安定法」によって06年には62歳、2013年には65歳というように雇用の延長が図られている。
望月 幸代(ミズ総合企画代表)
 女性の立場でいえば、07年問題などはない。25年間安定して職場にいることもないし、結婚・子育てで家庭に戻らなければならない。介護も担っている。しかも、人口の半分は女性である。
濱口 晴彦(学会運営委員長・創造学園大学教授・早稲田大学名誉教授)
 ローカルな時代にグローバルな視点で見れば、人口減少はむしろ、滅びの道を避けるという意味で賢明な選択ではないか。生物界では絶滅の前に巨大化するか、数が急激に増加する。

加藤 仁(コメンテイター・ノンフィクション作家)
 団塊の世代は、これまで一番、企業内教育投資を受けた世代で問題解決の手法を身につけている。これを地域社会が人材と見るか、撹乱要因と見るかで地域社会変革の様相が大きく変わってくる。
坂東 眞理子(コーディネーター・昭和女子大学教授・女性文化研究所所長)
 シニア世代の後半生の生き方について。
濱口 定年後は、目標の達成・モノの所有に狂奔する「生きにくさ」から開放されて「生きやすく」なる。それには「関係的な価値」を重視しなければならない。日本はその伝統を持っている。
望月 団塊の世代は「自己主張」が強い。それがないと多数のなかで埋没してしまうからだろう。地域社会へのソフトランディングについて、学会でも引き続き、活動してもらいたい。
清家 団塊の世代は、総サラリーマン社会の申し子。彼らが社会に出るときから変わった。企業と地域社会の価値観のミスマッチをどうするか。しかし、与えられた課題をこなす力は十分もっている。
加藤 団塊の世代を一般論で語れるのは義務教育まで。それ以後は拡散する。企業の論理を地域にもちこんでも大らかに迎えればよい。それでないと、彼らは個々に勝手に行動を始めるだけである。
この後、会場からは、
○地域社会での男性の活動支援の必要性。
○「シニアからの提言」なども立
派な学会の実践活動である。
○人口減少社会は大きな社会問題であるか否か。
○ペイド・ワーク、ア
ンペイド・ワークの見直し
など、活発な意見が交わされ、大きな盛り上がりを見せました。


会員による研究・事例発表
事前に応募のあった5名の会員から今年も例年と同様に高いレベルで多岐に亙るテーマの発表がありました。各氏ともに堅実な調査・考察に満ちたもので、単に発表大会での披露で終わるのは勿体ないとの声が多くありました。
5氏の発表概要は、下記の通り
(1)伊藤参午氏「シニア世代の生活と意見」
 所沢市の老人憩いの家利用者を対象にアンケート調査を行い、男女とも元気で前向きに生きる実態を明らかにした。
(2)黒澤眞澄氏「キャリアカウンセリングと社会学との融合を目指して」
  大学生のキャリアカウンセリング延べ800人の実績を通じて、心理学として輸入された キャリアカウンセリングが社会学と融合すると高い効果が得られるので、今後その方向に進めたいとの話があった。
(3)渡辺啓巳氏「地域の福祉力・農村地域の事例から」
 岩手県宮守村で宮守川上流生産組合を組織し、地域の農業を支えあう体制を作り、
6570才の人達で年間700万円/人という高い農業生産を可能にした。
(4)西田由紀子氏「現代日本の夫婦像を読み解く・夫婦は『で』の時代」
 
19932004年朝日新聞の投書欄記事をテクストデータにしてスクリプト分析を行い「夫婦で+何々する」というスクリプトが日常活動に浸透しており、現代において夫婦の絆を模索している実態を明らかにした。
(5)福元公子氏「団塊の世代の意識調査からパソコン・携帯電話の利用状況について」
 新潟県立村上高校卒業の団塊世代
765名にアンケート調査を行い、354名から解答を得た。パソコン利用者および利用回数で男女間に大きな差がみられた。携帯電話ではそれほど大きな差はみられなかったが、ハイテク時代の機器操作に男女格差、地域格差があることが明らかになった。

(3)懇親会の部:(出席者・45名)
予定されたプログラムがほぼ定刻に終了した後、「大隈ガーデンハウス」で懇親会が開かれ、高畑副会長の乾杯の音頭で今回の成功を祝いました。桂山理事司会のリードで、遠路参加した会員のスピーチを交えて和気藹々のうちに参加者の交歓が約1時間半続き、全ての行事を無事終了しました。

[総括]
今回の大会は、プログラムの構成・内容ともに好評だったことは事後のアンケートでも浮き彫りになりましたが、それに比し参加者数が少なかったことなどの問題点も残しました。



             
    
     第3回大会(2004.6.19)


      
   〜“エイジレス社会の実現をめざして”〜

 
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少子高齢化とデフレが手を携えてやってきた今日、私たちは子育て環境の悪化と年金制度に強い危機感を抱きます。

子どもは未来からの大切な預かりものです。未来を担う子どもたちの幸福を願って次世代育成のための新しい支援システムの創設を考え、提唱します。若者世代が抱く年金制度への不信感を取り除き、将来に亘って持続可能な年金制度を構築するために、思い切ってラディカルな変革を行うことが必要です。年金改革を一緒に考えましょう。

□と き : 2004年6月19日(土)
 □ところ : 早稲田大学・大隈小講堂 (東京都新宿区・早稲田大学構内正門前)

◆第3回研究発表大会 11:00〜17:00 

(1)「次世代育成支援に関する要望と提言」報告と トーク  11:10〜12:10
 世代間連帯へ小さな一歩・大きな願い 〜〜次世代育成支援研究会から 
  報 告 者 : 沖藤 典子 氏  (ノンフィクション作家・当学会理事)
「厚生労働省/雇用均等・児童家庭局 前局長 岩田喜美枝氏(資生堂常勤顧問)  との対談」

(2)「年金問題を考える」シンポジウム  13:10〜15:20
 “どうなる年金・どうする年金!”  ・・・・マスコミが採点する年金改革
   コーディネーター: 袖井 孝子 氏
        (お茶の水女子大学客員教授・当学会副会長)
  パ ネ リ ス ト :
      稲葉 康生 氏 (毎日新聞・論説委員)

        岩淵 勝好 氏 (川崎医療福祉大学教授・前産経新聞論説委員)
                 榊原 智子 氏 (読売新聞・解説部)
                 松浦  新 氏 (週刊朝日・編集部)
                 渡辺 俊介 氏 (日本経済新聞・論説委員)

(3)会員による研究・事例発表 15:30〜17:00
   
   次の6会員(五十音順)が発表します。
    石塚 光政氏(土浦市) 佐藤 純子氏(流山市) 高田 佳子氏(東京都)
    多湖 光宗氏(桑名市) 間野 百子氏(東京都) 山崎  晃 氏(仙台市)


◆懇親パーティ 17:10〜18:30
       会場:大隈ガーデンハウス(大隈講堂ウラ)     会費:3000円
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<第3回大会概要報告>

1.「世代間連帯へ小さな一歩−大きな願い」
                (次世代支援に関するトークショウ)

沖藤典子氏(学会理事・次世代育成支援研究会座長)と岩田喜美枝氏(厚労省前局長・且草カ堂顧問)の対談が約1時間行なわれ、3月に関係閣僚に提出した『「次世代育成支援」に関する要望と提言』の話題を端緒に「1.29ショック」がホットな少子化への問題解決に向けて示唆に富む対談が繰り広げられ、満場の聴衆に充実した感銘を与えたことでした。

<岩田氏・沖藤氏対談の概要>
☆『当学会が提出した提言書について』:次世代育成対策支援法が来年4月から施行される。それまでに自治体、各企業が次世代育成支援のための行動計画を検討・作成する時期に入っており、政治的にも行政上のスケジュールからも、大変良いタイミングで提出されたと思う。また、参院選も年金がテーマではあるが、少子化も大きな争点となるので、一石を投じたとも言える。
☆『女性への生き方支援、仕事と子育ての両立支援についての企業の戸惑いとは』:企業が自発的に取り組もうという気にならない。企業経営上必要という考えを持たず、また国の一方的な考えとして受けとめ自分の問題として考えていない。しかし両立支援は、企業の人材戦略として優秀な人材を失わないというメリットがある。育児休業などはコストのかからない投資である。
☆『男性の育児休暇取得について』:取得率0.33%というが、働き盛りの30代の意識は大きく変わってきている。子育て中の父親への意識調査の結果でも、「仕事と子育て両立」「家庭中心」が全体の2/3を占め、30代の男性は意識と現実のなかで葛藤している。
☆『休業保障40%は他国に比べ低いのではないのか』:休業中は社会保険の本人負担が免除されるので実質50数%になる。失業者の最低補償は60%だから、これを上回る事は不可能であり、雇用保険の枠組みの中で考えるとこれ以上は無理。当学会が提言した、新しいシステム(<注>たとえば「(仮称)子育て連帯基金」)の中で新しい財源が確保出来れば40%を越える事も可能ではないか。
☆『新システム創設のきっかけは、自営業には育児休暇がない、また親の職業によって児童手当も違う。子どもの視点に立って平等であるべき、ではないか』:今回の提言書にある、最初に“子どもは未来からの大切な預かりものです”に始まり、 “次世代育成支援こそが、未来の国づくりを目指す「米百俵」の精神です”で結んだ3つの提言は全て骨太であり、最も骨太は「新システムの創設」であり、是非実現させて欲しい。本当に今議論を始める絶好のチャンスである。
☆『子どもの声を誰が代弁するか、サービスの一元化は』:今、子育て支援対策は、1部は国、大半は地方自治体でやっているが、サービスについては市町村から声が挙がらないと動かない。市町村からの声が「フォーカルポイント」なる。したがって子どもの代弁を市町村からの声をいかに大きく出していくかが鍵。「介護保険」も当初は夢のように言われたが、3年でできたことを思い出して欲しい。
☆『0〜3才児までの9割が在宅保育で、母親への負担の軽減について』:仕事を持っている母親は、回りの人々と会話が出来るが、専業主婦には子育ての不安と負担がのしかかり、その負担感が大変大きく孤立しがちである。過去には母親一人が家に孤立して子育てをすることはなかった。多世代共生が大事であり、シニア社会学会の強みを活かせるテーマである。地域で祖父母世代と孫世代が接点をもてる施設を作ることなど地域的支援の仕組みを作る必要がある。
☆『今後の当学会の活動の中での留意していく点は何か』:仕事と子育ての両立は、社員にとっても会社にとっても大事である。また、企業が市場の変化に対応していくには、多様な人材が必要である。会社人間といわれ同じ価値観は持つ人が何人集まっても新しいものは生まれない。これからは多様な価値観を持った人々(男女・子育て・外国人・中途採用など)をいかに多く持つかが企業にとって大切。キャリアにとって子育てはマイナスではなく、子育てで親も育つ。また、子育てを通して地域社会とのつながりが出来、本人にとってもロスはない。子育てだけを議論するのではなく、ワークバランスとして、仕事とそれ以外の生活のバランスをはかるような働き方が大事である。ワークバランスの重要性、子育ての重要性を既に経験されているシニア社会学会の諸兄姉、特に男性から発言していただく事が、企業に対して説得力があり、少子化社会の危機的状況、その中にあっての企業のあり方、働き方を学会として社会に発信していって欲しい。(武者・記)

2.シンポジウム「どうなる年金・どうする年金」
      〜マスコミが採点する年金改革
袖井副会長のコーデイネターで、毎日・産経・読売・朝日・日経(以上、発言順)各紙メイン担当ジャーナリストをパネリストとして迎え、忌憚のない見解が展開されました。

設問1 袖井氏 今回の政府提案の年金改革案は、10点満点で何点か。
稲葉康生氏・毎日新聞論説委員 点数はつけられない。理由は、年金制度・政治に対する国民の信頼を失わせたこと。@政治家の年金保険料未納問題A合計特殊出生率1.29の法案成立後発表B保険料固定で給付の5割維持は無理C第3号被保険者・パートタイマーの年金問題の先送りD社会保険庁の年金積立金の流用問題E野党の三党合意の不手際。
岩淵勝好氏・前産経新聞論説委員 削られながらも法案をまとめた審議会・行政は5点。与党・野党は零点。三党合意をひっくり返した民主党は−5点。改革案の方向・考察・解説のなかったマスコミも−5点。つまり現在の給付>負担の図式が逆転する団塊の世代が年金世代になる時期が問題。抜本改革には10年を要する。それまで問題を放置できない。
榊原智子氏・読売新聞解説部記者 3点。3年近く議論してギリギリの線。問題を放置するよりは良い。一応給付減・負担増の問題も入っている。ただし若い世代の信頼回復・世代間不公平の問題にまで踏み込んでいない。保険料未納問題も世代間対話のきっかけとなる意味はあった。次世代育成を真剣に考えることなしに年金制度の将来はない。
松浦 新氏・週刊朝日編集部 5点+α。10年で2割、20年で4割給付を減らす内容。すぐ給付2割カットならば満点。少子化以前にすでに厚生年金は赤字。厚生年金及び基金加入者は減り、国民年金は空洞化。国をあてにしない考えが広まったほう
が良い。
渡辺俊介氏・日本経済新聞論説委員 3点位。プラス面@基礎年金国庫負担1/2への道筋A厚生年金及び基金の保険料凍結解除B在職老齢年金の改善C障害基礎年金と老齢基礎年金の併給承認D育児休業中の保険料免除等。審議会の一致した意見は、保険料固定・給付自動調整で少子化対策・雇用延長・経済成長に努力すること。給付と負担の双方固定は論外。

設問2 袖井氏 それでは、今どうすべきなのか。短期的・長期的に分けて考えるとどうなるか。
稲葉氏 現行の案は公明党案で参院選がらみの政治的なもの。政党のワクをこえて与野党全党での協議が不可欠。長期的には、すべての年金の一元化=所得比例年金。
岩淵氏 短期的には、政府で案をまとめる。年金は厚労省、国税は財務省といったナワバリを廃する。中期的には納税者番号制度の導入での所得捕捉率不公平の解消・消費税率アップ。長期的には、与野党全党での討議による年金の一元化。
渡辺氏 負担増なくして年金の改革なし。消費税率アップは避けられない。短期・長期は別にして3点しかない。@保険料固定・給付自動調整の改良版A基礎年金の国庫負担方式B保険料強制徴収による所得比例年金。

設問3 袖井氏 最後にメディアとして、今後年金問題を国民にどう伝えてゆきたいか。
渡辺氏 厚生年金は現在450兆円の未積立債務がある。解決策は給付を下げるか、負担を保険料・税金で上げるしかない。出生率・雇用が増えれば当然この負担は減る。スェーデンは、人口800万人余、徹底した地方分権、国民総背番号制、消費税25%、国民全部が確定申告をするという国柄である。
松浦氏 高福祉なら高負担、低負担であれば自助努力になる。社会保障制度を含めてどういう国にしたいのか、国民のコンセンサスの問題。マスコミはそれを伝える役割。
榊原氏 現行の国民皆保険を維持するのか。すでに二十代では破綻している。現在の受給世代またその家族も年金の有難さについて話合いがない。社会の安定・活気に貢献している面も大きい。改革はドラスティックにやらないと効果がない。
岩淵氏 2000年には受給世代1人を3.6人の負担世代が支えている。2025年には、1.9人で1人と約倍になる。この給付と負担のバランスからいって現行の制度は持続できない。次世代育成に力をそそいで人口構成を好転させるか、団塊の世代が受給減
の痛みに耐えられるかという問題。
稲葉氏 何人で1人の受給世代を支えるか。働ける人は65歳、70歳まで働くということになれば景色は変わる。マスコミの対応は、具体案・代替案を出す能力はないので、いたずらに不信を増幅するのではなく、出された案に対する客観的な判断材料を提供するということではないか。            (大島記)

3.会員による研究・事例発表(以下50音順)
◆石塚 光政氏(文京大学大学院経営学科・土浦市)
「女性の起業と事業活動に関する一考察」

多くの女性経営者の属性に迫ってその全体像から実態を把握することは、これから開業する女性たちに役立つと考え研究を始めた。彼女たちが近年注目されるのは、これまで潜在能力を発揮する機会がなかった女性への期待が高まってきているからだ。現在新規開業の13〜15%を占める女性経営者は、さまざまな分野で男性と異なる価値観の担い手として活躍している。(その特徴をアンケート調査結果で、開業動機・事業の選定理由・開業資金等の角度から説明)
男性経営者と同等なキャリアを積んできた女性経営者は、業績も良く、事業拡大意欲も強い。男性とは異なる視点でこれまでになかった事業展開をしてゆく社会的意義は大きい。

◆佐藤 純子氏(麗澤大学大学院国際経済研究科・流山市)
  「高齢社会における企業の高齢者雇用の必然性とその役割および成功要因」
父親が当時の55歳定年で退職し、見る間に元気をなくしていった経験から高齢者雇用を真剣に考えはじめた。元気なうちは「年齢に関係なく」働きたいという人が3割を超えるほどわが国の高齢者は就業意欲が高い。(人材派遣会社へのアンケート調査結果を説明)今後とも高齢社会では少子化による労働力不足だけではなく、高齢者が本来もっている豊富な体験や人脈、仕事の丁寧さを含む高い技能などが「高齢者雇用」を開発してゆく。「高齢者雇用開発コンテスト」での受賞企業の成功要因をみると、高齢者自身の意識改革が重要である。以前に勤めていた企業での体験・意識を払拭すること、さらに若い年齢層の社員と協調する意識などが求められている。

◆高田 佳子氏(桜美林大学 加齢・発達研究所・文京区)
  「イベントの社会的意義と高齢社会を元気にするイベントのあり方」

イベントは社会の活性化に役立つ、と考えてこれまで仕事をしてきた。高齢者への興味とイベント・マネジメントへの関心の双方から、桜美林大学大学院社会人コースの一期生にエントリーし、老年学をテーマにした修士論文が今回のお話のベースにある。日本ではこれまで、国体・植樹祭あるいは東京オリンピックや大阪万博といったイベントが、国際人としての自覚を促し、世界へ発信する活性化装置として活用されてきた。それから約40年、現在の高齢社会では高齢者の役割が乏しい。高齢者は介護の対象者、もしくは富裕な消費者という貧困なイメージに押し込まれていて、本来のパワーが発揮されていない。イベントを現代の日本を変えてゆく力として活用しなければならない。

◆多胡 光宗氏(ウエルネス医療クリニック・桑名市)
  「痴呆性高齢者の残存能力改善計画について」

学童保育と高齢者デイケアの双方に取り組むための施設を合築し、8年以上にわたってお世話をしてきている。お年寄りと子どもたちがただ一緒にいるだけでは駄目で、やはりそこには仕掛けがいる。高齢者のなかには、たとえば野菜づくりが得意とか、いろいろな経験の持ち主がいるので、子どもの教育・しつけに良い影響を与えることができる。悪いことをすると他人の子でも厳しく叱る。叱ると高齢者でも元気が出る。叱るだけでなく、その後を見守る。できると褒める。痴呆になってもこういうことができるのである。あるいは、子どもと遊ぶ、たとえば将棋を指す。シニアと子どもの双方に利点をもたらすには、計画的に交流する、仕掛けをする、それを3ヶ月以上つづけることが有効である。

◆間野 百子氏(東京大学大学院・豊島区)
  「高齢者の社会参加活動を促進するプログラム」
   ―米国の世代間プログラムを通じての考察−

この学会が標榜しているエイジレス社会・老若共同参画社会等を具現化してゆく上で、アメリカの「世代間プログラム(以下IPと略す)」は研究面だけではなく実践面でも体系化されて参考になる。IPの定義は論者によって異なるが、1999年に「国際世代間プログラム協会」(ICCP)はIPを「高齢者と青少年の間で互いの能力や知識を意図的・継続的に交換しあう社会的媒体」と定義した。また、この問題の第一人者であるサニー・ニューマンはIPの歴史的展開を、政府主導型で青少年と高齢者の交流プログラムが創出された第1期と、多くの団体が関与してプログラムの内容が多様化してゆく第2期とに分けている。本学会では、高齢者が青少年に積極的なモデルを示す役割を期待したい。

◆山崎 晃氏(東北シニアライフアドバイザー協会・仙台市)
  「Gerontologyってナニ?」

ジェロントロジーについては、8年まえに南カリフォルニア大学の教授から直接説明を受けて感銘を受けた。ジェロントロジーそのものが、私ども協会のコア的な活動テーマでもある。マリー・テレサはかつて「世界に貧しい国がある。それはアメリカと日本だ」といったことがある。その精神的貧しさを指摘したものだ。今の日本は青少年問題にしても、高齢者福祉にしても、はっきりした目的のない不安定さが蔓延している。これまで、人の働く上での能力は加齢によって落ちないことが実証されており、「長寿社会の人間学」は、私たちに与えられた至上命題だ。私どもの電話相談でも、最近は心の問題の比重が大きくなっており、一般論から個別の問題領域へと変化しつつある。              (守永記)


      
第2回大会(2003.6.21)

シニア社会学会第2回定時総会・大会プログラム

   〜〜“老若共同参画社会の実現をめざして”〜〜

□期 日:2003年6月21日(土)  
□場 所:早稲田大学・15号館 第202号室 
◆第1部 第2回定時総会 10:30〜11:10(40分) 
     □議事   第1・2号議案 2002年度活動報告及び決算報告
            第3・4号議案 2003年度活動計画及び予算案
            第5号議案   会則改正の件
            第6号議案   役員改選の件
◆第2部 第2回研究発表大会 <会員以外の一般の方も歓迎>                                      参加費:会員・一般の方とも1000円(資料代)
(1)記念講演 11:30〜12:20(50分)
 テーマ:「高齢者の地域活動と社会貢献」
      〜〜8割以上の老人は自立している!〜〜
      柴田 博 氏
      (桜美林大学・文学部健康心理学科教授、医学博士、当学会会員)
(2)研究報告 13:10〜14:40(90分) 
○雇用における年齢差別研究会   (報告者:清家 篤・慶應義塾大学教授)
○ユニバーサル・デザイン・スタディ(報告者:吉田 健一・UDS代表)
○多様な働きの場創出研究会    (報告者:菅野 正純・労働者協同組合理事長)
○次世代育成支援研究会      (報告者:望月 幸代・ミズ総合企画代表取締役)
○望ましいシニア像研究会     (報告者:濱口 晴彦・早稲田大学教授)
○定点観測調査プロジェクト    (報告者:守永 英輔・淑徳大学教授)
(3)分科会  14:50〜16:50(2時間) 
   研究報告別に6分科会に分かれて各研究会座長のリードで質疑・討議と応募の
     あった会員による研究発表・事例発表を分科会の中で行う。
(4)分科会報告 17:00〜17:45(45分)
   ※もう一度総会会場に戻り、各座長から5〜7分くらいで分科会の報告
◆第3部 懇親パーティ 18:00〜19:30(90分)
  □会 場:大隈ガーデンハウス(大隈講堂ウラ)
  □会 費:4000円   
                                           以上
<総会・大会概要報告>

第2回シニア社会学会定時総会・大会が、6月21日(土)早稲田大学15号館で開催されました。10時30分からの総会には会員223名が出席(委任状を含む)し、濱口晴彦理事・運営委員長を議長に選出して、守永事務局長の報告・説明の後、2002年度活動報告・決算報告、2003年度活動計画・予算案、会則改正、役員改選など6つの議案を、原案通り満場一致で可決しました。
その後研究発表大会が開かれ、11時30分より柴田博氏(桜美林大学教授・医学博士・会員)の記念講演「高齢者の地域活動と社会貢献〜8割以上の老人は自立している〜」があり、出席者はほぼ98%が共感したとのアンケート結果を得た興味深い内容に聞き入りました。
午後からは大会の部に入り、「雇用における年齢差別研究会」「ユニバーサル・デザイン・スタディ」「多様な働きの場創出研究会」「次世代育成支援研究会」「望ましいシニア像研究会」「定点観測調査プロジェクト」の活動報告があった後に、報告者を座長とする6つの分科会に分かれ、出席者はいずれかの分科会に参加して、約2時間熱心な議論が交わされました。
その後、再び会場に全員集合し6つの分科会から分科会での意見交換についての報告があり、17時45分、大会は予定通り終了しました。
18時から、大隈ガーデンハウスで懇親会が行なわれ、参加者が和やかに歓談した後、19時30分にすべての日程を滞りなく終了しました。

<柴田博・桜美林大学教授の記念講演>
「高齢者の地域活動と社会貢献活動」の概要

昨年4月に開かれた第2回の「世界高齢化会議」では、「サクセスフル・エイジング」という概念の中に、20年前の第1回会議の「生活の質」を中心とする考え方に加えて、新たに「社会貢献」(プロダクティビティ)という要素が採用された。
この会議は、4千人の各国代表が集まったが、このことは、高齢化問題が先進国だけではなく、現在、65歳以上の高齢者の8割が住んでいる発展途上国にとつても大きな問題である事を示している。
さて、欧米では、より良い人生「サクセスフル・エイジング」には、1)長寿、2)高い生活の質、3)社会貢献の三つの条件が必要と言われている。1)の長寿を保つという事は自明の事として、2番目の「生活の質」(クオリティ・オブ・ライフ)は、さらに次の四つの要素に分けられる。1番目は「日常の生活の基本となる動作が支障なく行えるかどうか」次は「自分の心身の健康状態にたいして自信をもてるかどうか」3番目は「生活環境」で、これには家族・友人など人的なもの、福祉などの社会的な支援、それに居住環境や街づくりなど物的なものが含まれる。最後の4番目は「自分の人生や生活に対する満足度」。これは心理的かつ主観的なものだが「生活の質」にとっては、最も大切な要素とされている。この「生活の質」に関しては、前期高齢者には問題はあまりないが、75歳以上の後期高齢者になると問題が多くなる傾向が見られる。
「サクセスフル・エイジング」の最後の「社会貢献」(プロダクティビティ)であるが、これは1)被雇用、自営業などの有償労働、2)家事労働などに代表される無償労働、3)高齢者同士の相互扶助、4)ボランティア活動などに分けられる。わが国では、仕事をもつことが、健康の元とする考え方が根強く、何らかの社会的役割をもって、それを果たす達成感こそが、いわゆる「生きがい」であると考える傾向がある。この点で、人生の目的は「安息」にあり「労働」は苦役であり、人間の原罪であるとするキリスト教社会とは一線を画している。したがって、欧米においては、比較的最近になってから「有償労働」を含む「社会貢献」がサクセスフル・エイジングの構成要素になったという経緯なのである。


         第 1 回大会(2002.6.15)

    第1回研究発表大会は2002年6月15日早稲田大学において132
      (うち非会員
20名)が出席し開催されました。

まず、山極完治・東邦学園大学教授が「自分たちの手で創る働き方・暮らし方〜新しい仕事起こし・まちづくりの提案」のテーマで記念講演を行った。

 その後、研究報告に入り、次の4人の方がそれぞれ20分ずつ、これまでの研究結果を報告した。
◇「雇用における年齢差別研究会」:清家篤慶應義塾大学教授
◇ 受託研究「社会的有用労働」 :松岡紀雄・神奈川大学教授
◇「定点観測調査プロジェクト」:中西武夫・横浜市青葉区民会議運営委員
◇「多様な働きの場創出研究会」:松木久佳・長寿社会文化協会前事務局長

 このあと参加者はそれぞれの興味にしたがって、報告者を座長とする4つの分科会に分かれ、1時間
40分にわたって熱心な議論をかさねた(96名が参加)。
分科会「雇用における年齢差別研究会」では成瀬勇氏(静岡市)が「雇用における男性・女性の管理職について」、「社会的有用労働」では吉田公平氏(栃木県烏山町)が「商店街の活性化について」、「多様な働きの場創出研究会」では小田敏紀氏(熊本市)が「NPO・有機農産物認証機関について」それぞれ事例発表を行った。