JAAS News第63号をお届けします。
シニア社会学会・事務局:2005.7.20.
・・・・目 次・・・・
第4回シニア社会学会の定時総会・研究発表大会報告(その2)
1.研究会活動報告
2.パネルディスカッション&タウンミーティング
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1.研究会活動報告
□雇用における年齢差別研究会[発表者:座長・清家篤学会副会長]
研究会の目標は、エイジレス企業社会の実現である。今年度はその一方策として「企業のエイジレス度の指標作成」及び「調査の戦略」をまとめた。(エイジレス度指標シート、フェイス・シートは学会誌3号92〜93ページ参照)フェイス・シートは必要最小限とした。指標は大項目として、1.企業の理念・姿勢 2.採用管理 3.処遇管理 4.退職管理。その中で、予備的調査の必要を感じ、この3月にプレ調査を行った。現在、調査表の修正を行っている。これを踏まえ、本調査をぜひ行いたい。真の成果はこれからの段階である。この間に、研究会のすばらしいまとめ役であった鈴木正昭さんが亡くなられた。心から哀悼の意を表したい。
□望ましいシニア像研究会[座長:濱口晴彦学会運営委員長 発表者:大島洋・報告書編集委員長]
『シニアからの提言』・「望ましいシニア像」研究会報告書を5月に刊行。報告書には研究会から52の「シニアからの提言」が報告されている。その内容は多様だが、大きくまとめて5つの方向がある。
1.《シニア社会に適合した制度の整備を》。シニアは社会のお荷物ではない。老いる権利の社会権化が必要。
2.《老若共同参画社会の世代間関係》。シニアの年金食い逃げ論など世代間緊張関係の調整が急務。
3.《地域社会という居場所から》。寛ぎかつ交わりをもてる居場所を公共政策として用意する。
4.《シニアは生き方でメンター(よき先輩)になろう》。シニアは自己啓発につとめ次世代に範を示す。
5.《シニアの願い》。大量定年を迎える07年に向け「シニアスタート」を考えるべき。
□次世代育成支援研究会[座長:沖藤典子学会理事、発表者:田口まり・研究会員・東久留米市男女平等推進センター運営協議会会長]
04年5月から奇数月に開催。第1回「つどい広場の意味と役割」奥山千鶴子氏(NPO法人びーのびーの代表)常設、日常性、多世代で支えること。第2回「シニアの社会的孫育て」雲雀信子氏(NPO法人サポーター・チャオ代表)支援するシニアはいまどきの親を知るなど。第3回「次世代育成支援施策の展開」度山徹氏(厚生労働省・少子化対策室)少子化社会対策大綱に当会04年3月提出の提言の思想が組み込まれた。第4回「鎌倉市の次世代育成支援の取り組み」石井和子氏(鎌倉市こども局推進担当)こども局の創設と関係部所の連携。第5回「各地で広がる幼保一元化の動き」山田麗子氏(遊育編集長)一体的運営の施設、私立幼稚園の預かり保育の広がり。第6回「多世代交流の大切さと夢」小泉恵子氏(NPO法人W,Coめーぷるここ理事長)四世代高齢者マンションの仕掛けなど。
□ユニバーサルデザインスタデイ(UDS)研究会[発表者:座長・吉田健一・アエカ代表]
フィールドワークを大切にした活動を行っている。「上野地区トイレマップ」を5月から配布。高齢者やご婦人のため、商業施設のトイレをオープン使用させていただくことが必要だった。マップは、A3判八折で携帯に便利。12箇所のトイレ紹介や使用時の思いやりのあるマナーを訴えた。1万部。学会からの一部援助のほかは会員の拠出金。後援の台東区役所から、次回は浅草をとの要望もある。感じたことは、お金、地域、人。地域に根ざす活動が大切。上野観光連盟からも感謝されている。トイレの掲載を断るところが多かったが、セブンイレブンではオーナーの奥さんが、快く掲載に協力してくれた。「現場にこそ解決のヒントがある」と実感した。マップは、好評だが、使用者からの使い勝手を良く聞き、今後の参考にしていきたい。
□社会保障研究会[座長:袖井孝子学会副会長、発表者:望月幸代・研究会員・ミズ総合企画代表]
目的は、社会保障の実態と問題点を究明し、その成果を報告書にまとめ、出来れば厚生労働省に提出すること。04年9月から10回、研究会を開催。第2回は連合の小島氏を講師に労働側の意見。第3回は日本経団連の松井氏から経営側の意見。第4回は内閣府の増田氏に行政側の意見を聞いた。第5回は井原社会保険労務士、第6回は朝日新聞松浦記者、第7回は野村総合研究所の坂本氏、第8回はお茶の水女子大の永瀬氏というようにさまざまな分野からの意見を拝聴した。その成果発表として05年10月29日(土)午後1:00から5:00まで、お茶の水女子大学で「年金シンポジウム ヤング対シニア」(仮題)を開催する予定。 (井上・記)
2.パネルディスカッション&タウンミーティング
「少子化・人口減少社会に挑むシニアの役割」〜2007年問題を考える」
守永 英輔(コーディネーター・学会事務局長・前淑徳大学教授)
まず、大量の定年退職者が地域社会へ戻る2007年問題について。
清家 篤(学会副会長・慶応大学教授)
07年の何が問題なのか。すでに年金の支給開始年齢の引き上げに対応して「高齢者雇用安定法」によって06年には62歳、2013年には65歳というように雇用の延長が図られている。
望月 幸代(ミズ総合企画代表)
女性の立場でいえば、07年問題などはない。25年間安定して職場にいることもないし、結婚・子育てで家庭に戻らなければならない。介護も担っている。しかも、人口の半分は女性である。
濱口 晴彦(学会運営委員長・創造学園大学教授・早稲田大学名誉教授)
ローカルな時代にグローバルな視点で見れば、人口減少はむしろ、滅びの道を避けるという意味で賢明な選択ではないか。生物界では絶滅の前に巨大化するか、数が急激に増加する。
加藤 仁(コメンテイター・ノンフィクション作家)
団塊の世代は、これまで一番、企業内教育投資を受けた世代で問題解決の手法を身につけている。これを地域社会が人材と見るか、撹乱要因と見るかで地域社会変革の様相が大きく変わってくる。
坂東 眞理子(コーディネーター・昭和女子大学教授・女性文化研究所所長)
シニア世代の後半生の生き方について。
濱口
定年後は、目標の達成・モノの所有に狂奔する「生きにくさ」から開放されて「生きやすく」なる。それには「関係的な価値」を重視しなければならない。日本はその伝統を持っている。
望月
団塊の世代は「自己主張」が強い。それがないと多数のなかで埋没してしまうからだろう。地域社会へのソフトランディングについて、学会でも引き続き、活動してもらいたい。
清家
団塊の世代は、総サラリーマン社会の申し子。彼らが社会に出るときから変わった。企業と地域社会の価値観のミスマッチをどうするか。しかし、与えられた課題をこなす力は十分もっている。
加藤
団塊の世代を一般論で語れるのは義務教育まで。それ以後は拡散する。企業の論理を地域にもちこんでも大らかに迎えればよい。それでないと、彼らは個々に勝手に行動を始めるだけである。
この後、会場からは、
○地域社会での男性の活動支援の必要性。
○「シニアからの提言」なども立派な学会の実践活動である。
○人口減少社会は大きな社会問題であるか否か。
○ペイド・ワーク、アンペイド・ワークの見直し
など、活発な意見が交わされ、大きな盛り上がりを見せました。(大島・記)
《編集後記》
日本経済新聞7月3日の日曜版第13面「セカンドステージ」の「男のたまり場」で「中高年が参加できる“たまり場”の例」として、シニア社会学会が紹介されています。ご一読ください。 (大島・記)
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