JAAS News第107号をお届けします  
            シニア社会学会事務局 2008年7月28日

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1.第
7回研究発表大会に対する参加者の感想 
  パネルディスカッションを聞いて@A              
2.「会員による活動事例・研究発表」の要旨            2

1.第7回研究発表大会に対する参加者の感想

パネルディスカッションを聞いて@  苅田 智子氏(千葉市)
大熊さんの発表では、河川の掃除や鮭の稚魚放流の活動は、昔きれいな河川で遊んだ世代にとっては、共感できるのである。私の弟が、熊本で環境運動である源流水リレーのリーダーである。子ども時代、毎日のように、球磨川で遊んだが、ダムによって、遊び場を失った。大熊さんの御連れ合いが河川工学の先生であり、繋がりがあった。住民の反対もあり、熊本の川辺川ダムの建設も中断している。河川と子育ては、関連している。杉山千佳さんの発表では、子育て支援のための予算が社会保障予算の4.1%でしかないことで、高齢者予算の70.4%に比べるとお粗末としか言いようがない。これは、選挙権を持つ高齢者の政治的な圧力に対して、選挙権を持たない子どもと政治に関心が薄い若い両親の政治力の弱さが、そのまま予算に反映されている。また子育ては女の仕事と言う意識が強い。私は、PTA会長をやっていたが、地域の危険な場所に信号機を御願いして、実現するまでに何年も要している。行政を動かすことには、根気と努力が必要であるが、自分たちの命を守るために諦めないことである。また、吉竹さんの高齢者施設での百歳のおばあさんの餓死については、長生きすることのリスクについて考えさせられた。社会貢献をみんなひとりひとりが考えて行くと住みよい地域が実現するのであろう。

パネルディスカッションを聞いてA
      神保 桂子氏
(パワフルエイジング研究会・新潟市)

大熊宏子さんの「市民活動とシニアの役割」はジェネラティビティ(世代継承性)をキーワードに、高齢期をパワフルに過ごし、社会に貢献していらっしゃる三人の方々の紹介があった。
70代や80代にあって今もなおその知恵や経験が地域共同体の資源として若者に要請され、生かされること・次世代さらに未来世代への思いやり・何かを生み出す力を実現していらっしゃるその報告は、私達に夢と希望を与えてくれるものであった。杉山千佳さんの発表は少子化対策や子育て支援について、制度の遅れなどを指摘した切実な訴えであった。子育てを終えて久しいシニアにとって、のんびりと過ごしている場合ではないとかきたてられるものがあり、アクションに移す時は今の思いを自覚することができた。吉竹弘行さんはグローバルな視点で地域の活動を展開していくというユニークな発想の実践報告であった。人間関係の稚拙さやバランス感覚の悪さを乗り越え、はじめて感謝や気配りのいきた住みやすい地域が生まれていくのであろうと思われた。一人ひとりのシニアがそれぞれの地域で実践していくことこそが求められているのであろう。 バラエティに富んだパネラーの発表に対し、コメンテーターからは老若男女共生に向けてたくましく、柔軟なシニアを目指すべくエールをいただいた思いであった。来年のシニア社会学会には更にスキルアップを図って再びお会いしたいものである。

2.会員による活動事例・研究発表の要旨

◆シニアが地域で活動しプレーヤーになるプロセス◆
〜“関わり方の実践体験”が参加を促す〜
   
  堀池喜一郎氏(当学会理事・NPO
法人シニアSOHO三鷹・顧問)
@シニアの特質と役割、Aシニアに課題解決型社会参加を促す鍵は「大人が学ぶとき」の共感、B成功事例に見る「シニアの変身」「地域で信頼を得る」プロセス。シニアが地域参加に消極的なのは、人生経験のあるシニアに「成果実現と関わり方や関係性」の共感を示すことができる学習をさせないからである。そこで、「成果実現と関わり方の体験」を徹底して実践する方法で短期間に活動を展開した生涯学習・地域活動の事例を紹介することで、シニアが地域人・プレーヤーに自身を変え、地域で信頼を得るプロセスを提示し、シニアの地域活動参加の促進を図るのが狙いである。

◆シニア大学院生の、等身大の研究課題と役割◆〜市民活動への貢献を視野に〜
       山之口俊子氏(九州保健福祉大学博士後期課程在学中・姫路市在住)
シニアボランティアの生きがい生成要因は、地域資源、ゆとり、生涯現役感などでタイプとして@社会奉仕型:当事者のライフヒストリーにかかわらず、時代の要請に応じて活動するもの。「安全・安心」、「地域教育の支援」を活動の主な目的とする。A少年時代への回帰型:少年時代からの趣味の継続、願望の達成を活動の根幹とするもの。「少年野球チーム」、「電子工作教室」の指導と交流を楽しむ活動など。B自己完結型:ライフヒストリーの集大成を、社会還元として活動に活かす。「地域の保健思想の啓発」、「地元の伝統行事の保護・伝承」など生涯をかけて続ける活動など。

◆総合社会システムによる子育て支援◆
    苅田智子氏(株式会社カリタマネジメントオフィス代表取締役)
子育て支援は、行政と企業と地域社会との連携と統合である。@企業の成功事例:株式会社カミテ(秋田県小坂市)。企業内に保育園をつくり、保育士を雇用し、子育て支援することで、従業員のモチベーション・アップを図り、企業の業績に貢献。A行政の成功事例:佐倉市。行政指導により、地域社会の中で様々な職業や特技を持つ大人が、母親や子どもたちに子育て支援の教室を開くなどの活動を通して地域の連携強化に貢献。B地域社会での成功事例:千葉市ラグビースクール。長期間にわたる地域社会の中での中高年から高齢者のボランティアによる子育て支援活動。

◆世代間交流・次世代支援「国際交流夏休み子どもキャンプ」◆
    神保桂子氏(パワフルエイジング研究会・新潟市)
異世代・異文化交流の場としての初の試みで、平成19年8月19日〜21日までの2泊3日、新潟県立少年自然家で実施をした「国際交流夏休み子どもキャンプ」の報告。○大学生をリーダーとして縦割りのグループ編成が参加者の主体性を助長した。○大学生は異年齢の子ども達をまとめていくことで、多くの学びが得られた。○小学生は家族以外のお兄ちゃん・お姉ちゃんや大人達と親しくふれあい、参加した留学生を通してアメリカ・ドイツ・タイ・ニュージーランドなどの国々に興味や関心を持つことができた。○シニアは参加者から若さと元気をもらい、生きていることの喜びを味わい、次世代に役立ちたいという思いを実感した。