JAAS News第49号をお届けします。   
               
シニア社会学会・事務局:2004.7.16.

1.第3回研究発表大会の概要報告(その2)
6月19日(土)の第3回研究発表大会の概要を第48号に引き続きご報告します。

(1)シンポジウム「どうなる年金・どうする年金」(マスコミが採点する年金改革)
袖井副会長のコーデイネターで、毎日・産経・読売・朝日・日経(以上、発言順)各紙メイン担当ジャーナリストをパネリストとして迎え、忌憚のない見解が展開されました。
設問1 袖井氏 今回の政府提案の年金改革案は、10点満点で何点か。
稲葉康生氏・毎日新聞論説委員 点数はつけられない。理由は、年金制度・政治に対する国民の信頼を失わせたこと。@政治家の年金保険料未納問題A合計特殊出生率1.29の法案成立後発表B保険料固定で給付の5割維持は無理C第3号被保険者・パートタイマーの年金問題の先送りD社会保険庁の年金積立金の流用問題E野党の三党合意の不手際。
岩淵勝好氏・前産経新聞論説委員 削られながらも法案をまとめた審議会・行政は5  点。与党・野党は零点。三党合意をひっくり返した民主党は−5点。改革案の方向・考察・解説のなかったマスコミも−5点。つまり現在の給付>負担の図式が逆転する団塊の世代が年金世代になる時期が問題。抜本改革には10年を要する。それまで問題を放置できない。
榊原智子氏・読売新聞解説部記者 3点。3年近く議論してギリギリの線。問題を放置するよりは良い。一応給付減・負担増の問題も入っている。ただし若い世代の信頼回復・世代間不公平の問題にまで踏み込んでいない。保険料未納問題も世代間対話のきっかけとなる意味はあった。次世代育成を真剣に考えることなしに年金制度の将来はない。
松浦 新氏・週刊朝日編集部 5点+α。10年で2割、20年で4割給付を減らす内容。すぐ給付2割カットならば満点。少子化以前にすでに厚生年金は赤字。厚生年金及び基金加入者は減り、国民年金は空洞化。国をあてにしない考えが広まったほうが良い。
渡辺俊介氏・日本経済新聞論説委員 3点位。プラス面@基礎年金国庫負担1/2への道筋A厚生年金及び基金の保険料凍結解除B在職老齢年金の改善C障害基礎年金と老齢基礎年金の併給承認D育児休業中の保険料免除等。審議会の一致した意見は、保険料固定・給付自動調整で少子化対策・雇用延長・経済成長に努力すること。給付と負担の双方固定は論外。

設問2 袖井氏 それでは、今どうすべきなのか。短期的・長期的に分けて考えるとどうなるか。
稲葉氏 現行の案は公明党案で参院選がらみの政治的なもの。政党のワクをこえて与野党全党での協議が不可欠。長期的には、すべての年金の一元化=所得比例年金。
岩淵氏 短期的には、政府で案をまとめる。年金は厚労省、国税は財務省といったナワバリを廃する。中期的には納税者番号制度の導入での所得捕捉率不公平の解消・消費税率アップ。長期的には、与野党全党での討議による年金の一元化。
渡辺氏 負担増なくして年金の改革なし。消費税率アップは避けられない。短期・長期は別にして3点しかない。@保険料固定・給付自動調整の改良版A基礎年金の国庫 負担方式B保険料強制徴収による所得比例年金。

設問3 袖井氏 最後にメディアとして、今後年金問題を国民にどう伝えてゆきたいか。
渡辺氏 厚生年金は現在450兆円の未積立債務がある。解決策は給付を下げるか、負担を保険料・税金で上げるしかない。出生率・雇用が増えれば当然この負担は減る。スェーデンは、人口800万人余、徹底した地方分権、国民総背番号制、消費税25%、国民全部が確定申告をするという国柄である。
松浦氏 高福祉なら高負担、低負担であれば自助努力になる。社会保障制度を含めてどういう国にしたいのか、国民のコンセンサスの問題。マスコミはそれを伝える役割。
榊原氏 現行の国民皆保険を維持するのか。すでに二十代では破綻している。現在の受給世代またその家族も年金の有難さについて話合いがない。社会の安定・活気に貢献している面も大きい。改革はドラスティックにやらないと効果がない。
岩淵氏 2000年には受給世代1人を3.6人の負担世代が支えている。2025年には、1.9人で1人と約倍になる。この給付と負担のバランスからいって現行の制度は持続できない。次世代育成に力をそそいで人口構成を好転させるか、団塊の世代が受給減の痛みに耐えられるかという問題。
稲葉氏 何人で1人の受給世代を支えるか。働ける人は65歳、70歳まで働くということになれば景色は変わる。マスコミの対応は、具体案・代替案を出す能力はないので、いたずらに不信を増幅するのではなく、出された案に対する客観的な判断材料を提供するということではないか。       (大島記)

(2)会員による研究・事例発表:次号でご報告します。

2.研究会活動等報告とお知らせ
□「望ましいシニア像」研究会
18回「望ましいシニア像」研究会は、79() 21名が参加して開催されました。全体会に先立ち前回同様分科会が実施されました。全体会では2グループの代表から研究発表が行なわれ、第1グループは竹中淑さんから、『「生きがい」視点のアプローチ』と題して第1グループの作業フレームについて内容の豊富な提案がありました。一方、第2グループからは伊豆山善夫さんが担当されている、年金のテーマについて、200465日年金制度改革法を中心に報告がありました。提言の課題はシニアの年金を辞退する人を掘り起こすことであると述べられました。2人の発表の後、濱口座長から@シニアをポジティブに捉えるかそれともネガティブに捉えるかということであるが、シニアには生きてきた経験のX軸と問題解決の幅を決める問いかけのY軸の2軸があり、Y軸がシニアの評価に繋がること。A健康・経済・生きがいの3つの見取り図を今後作成したいと思う、と総括がありました。
 次回は、来る910 ()6時から早稲田大学高田牧舎2階人総研会議室で開催されます。テーマは「2分科会の代表者による研究報告」と「提言書の具体的構想の確認」についてであります。分科会は研究会(全体会)に先立ち、15時から同一会場で行なわれます。なお、115()6()に一泊二日の合宿による研究会を実施し、提言書の取りまとめ作業を行なう予定です。お問い合わせ等は、事務局当研究会担当の島村まで。 (島村・記)

□次世代育成支援研究会
次回は9月9日()午後6時から、会場は子育てひろば「あい・ぽーと」(外苑前駅、徒歩1分)。テーマは、「少子化対策基本法大綱」についての予定です。

□ 雇用における年齢差別研究会
次回は、726日(月)18時から・慶応大学(三田)新研究棟446号室にて6/23の研究会に引き続き森馨一郎氏の手になる「企業のエイジレス化努力の測定指標」案を検討します。(鈴木・記)

3.シニア・ニュース
()2001年日本委員会【総務省所管公益法人、理事長:今野由梨】の懸賞論文募集のお知らせ
当財団では昭和62年から<21世紀への提言>としてその年その時の大きなテーマで論文を募集し、優秀作品を広く公開してきました。このたび第16回目の懸賞論文募集をいたします。
テーマは「シニア立国日本 わたしたちの挑戦」 募集期間 200482日から96日まで、論文原稿は6000字以内、日本語による未発表のもの。詳細は下記のホームページをご覧の上、ご応募ください。 送付および問い合わせ先:財団法人2001年日本委員会論文係
事務局メール year2001@cb.mbn.or.jp        電話 0334782012 
ホームページ  http://www32.ocn.ne.jp/~year2001